架線作業車

軌道の点検、補修については1940年代から機械化が進められています。しかし、架線の点検、補修については機械化がかなり遅れています。
架線の点検で一番重要なのはトロリー線の摩耗測定と呼ばれる作業で、トロリー線がパンタと接触し、すり減ってくると断線する可能性があり、このすり減り具合を検査するのが摩耗測定です。スパークなどでアークを引くとこれも傷となり断線の原因となります。これらの測定、監視作業を機械化すると、新幹線で言えばドクターイエロー、東急で言えばTOQ-i(かつてはデヤ3001が活躍)となり、このような車両を保有している鉄道事業者はまだまだ少ないです。
検測車を持っていない鉄道事業者はどうするかというと、夜間に測定用の「作業車」を走らせ、この辺の作業事情は軌道検測車を持っていない鉄道事業者と同じです。
こちらは西武鉄道の電気検測車となっていて、軌陸タイプの作業車です。屋根上にあるパンタグラフで測定作業を行います。

この様な測定作業車は中小私鉄ではほぼ皆無に等しく、では、どうしているかというと、竹梯子を架線にかけて測定するか、木製などで出来たタワーと呼ばれる物を使用して、上に作業員が乗り手作業で測定しています。

この作業は木製タワーの他、モーターカーに昇降台を設置したものもありコチラは若干近代的な感じがします。

摩耗測定作業は最近では、ある種の光線をトロリー線に当てて、その反射などで測定することが出来るようになりましたが、この辺のことはまた何れの機会に。
さて、レールと同じように架線もすり減ると交換となります。レールは25m毎に取り替えられますが、架線はすり減った箇所や痛んだ箇所+αの長さを交換します。架線はドラムに巻き取られた状態で売られていて、コレをトロ台車などに積み込み、ハシゴや木製タワー、昇降台付きモーターカーを使って交換していきます。
下の写真は秩父鉄道で、ドラムは先頭の牽引車である軌陸車の荷台に積まれていて、後方のタワーに作業員が乗り金具などの接続を行います。
タワーはメーカー製のものもあり、メーカー製はFRPで製作されています。木製タワーはどちらかというと各鉄道事業者が大工仕事的に仕上げているモノが多く同じ物はあまり見当たりません。

機械化がかなり遅れている架線工事ですが、新幹線だけは別です。在来線では痛んだ箇所だけトロリー線を交換して、境目は接続金具を使用しますが、200キロ以上の速度で走行する新幹線の場合この接続金具が持ちません。そのため、架線が痛んだ場合は引止柱から引止柱までの全区間を交換してしまいます。

とは言っても引止柱間は1.5キロ~2キロ近くあります。なので、トロリー線の延線、巻取りとも機械化された専用の架線作業車が編成を組んで行われます。
コチラは山陽新幹線の架線作業車編成です。ちなみに上の写真と下の写真とも先端にパンタグラフのようなモノが載っていますが、ハイブリッド走行用ではなく、作業時に感電事故を防ぐためのアースを取る装置です。

コチラ西武のものですが、似て非なる物でトンネル点検用のモーターカーです。主に秩父線で使用されていて、点検台はトンネルの上部を確認する物ですが、実際には電力係員も便乗していると思われます。ちなみに、西武では電気部所属のモーターカーは赤帯になってます。


当ヘッポコ鉄道での架線作業車はコレだけなので、組合から作業環境の改善と高所作業手当の値上げ、機械化を要求されています。
模型でもこう言うアイテムが出てくると嬉しいです。