架線柱と周辺のお話-前編-

お正月があけ、会社の先輩がモジュール作りたいと3年前から言っていたのが漸く行動開始となりました(人の事言えませんが・・・)。
で、「ヘッポコ君、レールは売ってるのつなげればいいし、1本25mっていうのは聞いたことあるけど、架線柱は何mおきなの?」っと質問されましたが、「んなの決まって無いッスよ」っと言いました。が、事実なので仕方ないのです。
実際にビジュアル的なセンスでつけるのが手っ取早いですが、そのうち架線の話題がでまして、「よく分からないんだよね。教えて」っとなりました。

今回から直流1500V区間について、3話に分けてあれこれ書いてみます。
1回目は各部の名称と役割です。模型の架線柱ですが、カトーのタイプが一番理に叶っているのでこれで説明します。
下の架線柱、柱とビームは分かると思います。専門的には「V型トラスビーム柱」と呼びます。電気屋さんには「ブイトラ」で通用します。そして、上にもなんだか付いてます。左側2個の碍子が「き電線」と呼ばれる電線が付くところで、右側3個の碍子が「信号高配線」と呼ばれる送電線が付きます。

実際の架線柱を見てみましょう。東急東横線祐天寺駅付近の架線柱です。模型では鉄骨柱等と呼ばれ最近トミーからも再販されました。実物では「ラーメン柱」と呼んでいます。

「架線」の他にビーム上にまた何か付いてます。左側を見ると2本の線がありますが、これは「き電線」と呼ばれるものでカトーの架線柱にもちゃんと2個碍子が付いてました。
き電線はフィーダー線とも呼ばれまして架線と同じく1500Vが架かっています。架線のうち、トロリー線と呼ばれるパンタグラフと接する一番下の線は約110mm2っと、とても細く電圧降下もあるため、一定間隔でき電線と接続させ、架線の電圧降下を防ぐ役割を持っています。模型で、大きな運転会をやると線路給電だけだと電圧降下するので補助フィーダー入ますが、これと役割が似てます。2本あるのは上り線用き電線、下り用き電線と分かれているためですが、ピクトリアルを読むと東急は近年上下一括き電方式を採用しているようです。

さて、今度は右側を見ると3本電線があります。カトーの架線柱にも写真右側に3個碍子があります。これは「信号高圧配電線」といい、信号機や駅設備に電力を供給している送電線で、同じくピク増刊号によると東急は交流6600Vを送電しているようです。

信号機への給電や駅近くではキュービクルなどに引き込み、交流200Vや100Vに降下させ蛍光灯や券売機、駅員さんがお茶を飲む電気ポット等にも給電されます。ビーム下に太く写り込んでいる電線はおそらくLCXという列車無線のアンテナ漏洩ケーブルです。

会社を変えて西武池袋線の狭山ヶ丘駅を見てみます。駅が近いので配線の取り回しが若干違いますが、ちゃんとき電線と信号高配線が配線されています。
左側一番上にある細い線は「架空地線」と呼ばれる線で、空にある地面の線です。つまり地面と同じ電位を保つ電線で、落雷対策によく用いられます。「ココが地面ですよと」低い電圧を与えておくことで、雷さまに地面と錯覚させ配電線へ落雷させずにこの架空地線に落雷させる役目があります。

ピク西武特集を読むと、「秩父山岳方面が近く落雷対策で全線に架空地線を設置」と記述があります。西武線モジュールに架線を張る場合この辺もポイントになりそうです。
さて右側ですが、こちらは信号高配補助線と構内の低圧配線があります。ここらにくると、応用編になります。
ピク特集を読むと、「信号高配は2回線化」と書かれています。これは信号高配のバックアップを兼ねた補助線と言えます。近年の列車設備の2重系統化と同じです。メイン回線に何かあった場合にコチラの送電系統に切り替える事で、サービス電源が保たれると言うわけです。
電線は1本に見えますが3本の線が撚り線となっていて、それぞれ絶縁素材が使われています。3本バラの被服送電線より若干値段もお高くなり、この辺の事情が3本線の高配線と意味が違う所です。

もう一つの碍子があるのは、構内のポイント用水銀照明等に利用される低圧配電線です。この辺は駅や会社などで事情が異なりますのであくまで応用編です。
なお、ピクによると西武線の信号高配は交流6000Vと東急と電圧も違うようです。いきなり応用もだしてしまいましたが、基本的には架線柱ビームには2本のき電線と3本の信号高配線があると言う事を理解していただければと思います。

-つづく-