変電所のお話-その6-

変圧器はメインな機器だけにちょっとお話が長引いてしまいました。このブログのサブタイトルが「模型を作るための備忘録」なので模型への応用も。
さて、前回も出た下の写真をまた見てください。

知り合いからもよく「シキのトランスって形変だよね」っと聞かれます。上の写真の本体とマイクロのシキ800の積み荷を見比べてみてください。
ちなみにこのシキは今年台湾で購入してきたヤツです。

おわかり頂けましたか?シキに積まれているのは本体部分のみなんです。ブッシングやコンサベータ、そして特徴的なラジエターは後付けなんです。
変圧器の形状を思い浮かべて一番印象に残るのがラジエターなので、シキの積荷の形状が結びつかないんです。っと言うわけで、シキ1000に付いている積荷はちょっと怪しいです。
ちなみに、実物は崇拝する神のこちらのページをご覧ください。しかしいいなぁ・・・
トミックスの変圧器を見てみます。たぶんこれがそうだと思いますが、なんとなくそんな感じです。左側の半円部分はコンサベータをイメージしていると思います。

ブッシングについてはなぜか1つだけ向きが変です。三相交流なので1次側(高圧側)に3個1セットでブッシングがついているのは「その5」に出てくる写真でもおわかり頂けるかと思います。

ってなわけで、穴を瞬接で埋めたあと、ブッシング用の1ミリの穴を真ん中に開け直しました。

完成です。このブログ「その筋」の方にも見て頂いているようなので、ガレージキットから変電所機器が出ないかと期待してます。

トミックスの変圧器と思われる部品のブッシングの並びですが、一つだけ心当たりのある機器があります。それが下の写真です。ちなみに、何度も出てきているJR東海の原変電所です。

下の写真は山陽天満変電所です。ブッシングの並びおわかり頂けますか?なんとなくトミックスの変圧器に似通う物があります。
これは計器用変圧器と言い、大抵は遮断器の直後に設置されます。計器用とは家庭で言う積算電力計と思って頂いて結構で、この変圧器の後ろに電力会社のメーターが付いて、電気料金を算定されるという意味合いです。

あと2回で終了します。
もう少しお付き合いを・・・
-つづく-

変電所のお話-その5-

さていよいよ核心的な部分の変圧器に入ります。変圧器の手前に断路器を設ける時と設けない時がありますが、設けるのが一般的です。断路器の形状は以前に説明したのと同じ形状で構いません。

変圧器については、ここではき電線への供給用変圧器の事をさし、整流器用変圧器と呼ばれます。変成器なども同じ意味合いを持ち、総称として変成設備などと呼ばれ電圧を変換(降圧)させる役目があります。直流電鉄変電所の変圧器は、一般的に電力会社より66000Vで受電した電気を、1200V程度に降圧させます。この辺も興味のある方はネット検索で研究してください。
実物を見てみましょう。
実は電鉄用変電所で写真に良く収まる変圧器が無かったので、大船の住友電工にある工場用変圧器で名称説明します。形はそんなに変わりませんので・・・下の写真でなんとなく形は分かるかと思います。

大まかな構成は下の写真のようになります。変圧器は熱と音が凄く、冷却にはオイルを用います。
本体は真ん中の四角い部分です。両脇には冷却用のラジエターが設置され、この変圧器ではラジエター冷却用ファンも見えます。
変圧器の碍子と言う部分はブッシングと呼ばれます。コンサベータは本体の冷却に使用するオイルのタンクのような物で、これはGM変電所キットに附属する変圧器にはしっかり表現されており、説明書にも「コンサベータ」と載っていました。

コチラは山陽天満変電所の変圧器でラジエターがよく見えます。一般的に記憶の中に残る変圧器の形状は、このラジエターが印象に残っていると思います。本体では無いんです。

コチラはJR東海原変電所の変圧器になります。ブッシング、ラジエター本体の区別は付くでしょうか?本体はクリーム色なのがわかります。

こちらは原変電所の信号高配用変圧器です。き電用変圧器に比べると信号高配用は少し小型です。住友、山陽と比べると21世紀仕様のクリーム色で機器も新しく感じます。

こちらは初登場の西武鉄道所沢変電所の変圧器で、ブッシングなどは見当たらず、地中配線になっていて21世紀仕様のクリーム色、スッキリ配線になっています。
ラジエターと本体は見比べられるようになったと思います。銘板は「明電舎」になっていました。西武は明電舎をひいきにしているようです。

コチラは東武鐘ヶ淵変電所の信号高配用変圧器です。この裏にき電用変圧器もありますが、写真に撮れる場所にありませんでした。地中配線にも対応した今どきの変圧器はブッシングも見当たりません。左側にラジエターが見えます。

変電所における変圧器の数ですが、き電用変圧器2台、信号高配用変圧器1台で合計3台の変圧器が一般的に設置されている数です。地方の中小私鉄はき電用1台、信号高配用1台というのもあります。
下の図はコチラのお話をしたときの図を改良したものです。

Aパターンはπ型き電とよばれ、変電所を境に両側に別系統の電気を送る一般的な送電系統になります。別系統というのは変圧器以下の機器が2系統となっていて別々のき電回路が構成されているという意味です。
BパターンはT型き電とよばれ同一系統の送電方式で、地方中小私鉄や大都市で電圧降下が激しい場所などに使用される方式です。つまり変圧器以下も1系統というこです。
Aパターンの場合、別系統で起点方、終点方に送電できるため、落雷や機器トラブルがあったとき、また事故などで断線した場合はどちらか片方の送電を続ける事で、その区間の折返し運転ができるなど、異常時における運転見合わせ区間を最小限にする事ができます。
しかし、Bパターンでは機器が故障した場合この変電所の持ち区分がすべて停電します。また事故などで電気を止めなければならない場合、同じように全区間停電させなければなりません。
大都市の鉄道や幹線の変電所では3台の変圧器がるのが一般的です。
変圧器は1回で終わらせる予定でしたが、模型については次回見てみましょう。
-つづく-

変電所のお話-その4-

今回は遮断器についてのお話です。前回の断路器ですが、説明写真の文字スタンプが遮断器になっていたので修正しておきました。
遮断器は構成図でいうと断路器の隣です。前回のお話で大雑把に断路器はスイッチ、遮断器はブレーカーと書きましたが、変電所内で回路に何かあった場合や、送電先に異常が発生した場合この遮断器が動作して、回路をまさに遮断し変電所内の機器を保護します。遮断器には過電流継電器などが付加されています。

下の写真でV字型に碍子のついている機械が遮断器です。筒状の内部にはシリンダーの「ようなもの」が入っており、そのシリンダーを抜き差しすることによって回路を遮断します。SF6という絶縁性の高いガスを接点へ吹き付ける事により、高圧電気でもアークを引くことなく、瞬時に電気を切ることができます。

これも遮断器です。

さて、こちらの下の写真で機器構成を見ていきましょう。1回線受電の変電所ですが受電、断路器、遮断器と並んでいます。この変電所はJR西日本の本郷変電所です。

こちらも1回線受電ですが、構成図どおり並んでいるのがわかるかと思います。手前の大きな碍子は避雷器です。この変電所はJR西日本の倉敷変電所です。

1回線受電の場合でも通常は変電所内で2系統以上にわけるため、この場合は鉄柱で組んだやぐらに母線を渡しそこから分岐する構成をとります。
下の写真は何度も出てきているJR東海の原変電所です。こちらもこのように並んでいます。

模型を見てみましょう。説明書では碍子台と書かれている物がそれらしい形状をしています。碍子台というのは機器名称ではなく、部材名称だと思います。実物の多くは円筒形状のベースにブッシング(碍子)がついています。

こちらは先日関西へ行った際の山陽電鉄天満変電所にあった遮断器です。縦型の遮断器です。模型の変電所の部品はあまり自作せず、簡単にそれらしく見せるため、まぁこの辺を見比べてみてトミックスのはそのまま使用する事にします。

さて、受電のときに説明した地中配線変電所になっている東武鐘ヶ淵変電所を見てみますと、断路器や遮断器がまったく見当たりません。これらの機器はすべて写真右奥にあるキュービクルの中に収納されています。

近年は機器を小型化させても安全度や信頼度が向上しており、小型キュービクルに収めることができるようになりました。このキュービクル内の遮断器などは乾燥した空気を吹き付けるタイプと思われます。
外観の塗色は以前はグレー系統が殆どでしたが、平成12年頃からはクリーム系統の色が多く使用されるようになっています。塗色についてはこちらもご覧ください。
ところで、なぜ見えないこの中にそれらの機器が入っているのがわかるかというと、機器類を見ればわかる経験もありますが、下の写真にあるキュービクルの番号に秘密があります。

電気機器類についてはJIS規格でディバイスナンバーというのが指定されています。たとえば交流遮断器は52、断路器は89となっており、さらに直流電鉄変電所では受電ではRという記号をあわせています。
189R1は受電1系統の交流遮断器で受電側から最初の遮断器と言う事が読み取れます。興味のある方はこの辺はネットで調べてみてください。山陽の天満変電所の遮断器にも四角い箱の横に、52Gと書かれているのが分かると思います。
まとめとしては
断路器の次は遮断器
鉄則です。
そして、21世紀以降の変電所機器であれば
クリーム色に塗装
と、言う事です。
ちなみに、この遮断器は母線方式をとると2回線受電でも設置数は1個でも大丈夫なんです。当然例外もありますが、この辺は次回以降に。
変電所のお話その2に出てきた柿の木坂変電所の送電系統図で、「駒沢」というのは駒沢線の部分では無く、駒沢変電所を指す物のようで、バスターミナルさんから連絡がありました。
つづく