架線柱と周辺のお話-交流編・後編-

前回から随分時間が経ってしまいました・・・
先週末仕事がようやく一段落し、これからは乗り鉄にも出かけられそうです!
前回は、交流は効率よく電気が送れ、電圧が高い分大電流を送る必要がない、と言うところで話を終えましたが、首都圏の鉄道でよく見かけるツインシンプルカテナリーはその様な理由で交流区間には存在しません。
前回は在来線で一般的なBT方式について簡単な解説をしまして、今回はAT方式です。AT方式の方が後発の送電方式でBT方式よりも優れている点があり、新幹線や近年の交流在来線(つくばエクスプレスなど)に採用されています。
下にATき電方式の電気の流れを下に示します。

BT方式との構造の違いは、トランスの巻き方にありき電線電流量を減らす事ができます。よって変電所の数を減らす事ができ、AT方式の変電所間隔は100km近く離しても大丈夫なようですが、新幹線では平均40km程度の間隔で変電所を設置しています。
専門的な設備について書き始めると長くなるので、興味のある方は検索してみてください。この先は模型化する際の設備的なお話にします。
上の汚いイラストにあった電線の配置例です。写真は東海道新幹線ですが、架線柱の更に上側にATき電線とAT保護線があります。これは上下線別に用意されています。
変電所付近と駅構内以外はほとんどこの配置になるので、KATO、トミックス共に少し工夫しないとダメです。

変電所付近では送り出し用のATき電線が2本増えています。

オイルターミナル-その6-

大船駅の東海道線ホームにこんなポスターが貼られてました。211系はいよいよ最後と言う感じです。

忙しさと寒さのあまり、手先をほとんど動かしてませんが1日5分モデラーで進行中。タンク部材と積み卸し設備のハンドホールの切り出しを終えました。亀さんロバさん・・・
ハッチの様な部品には締め付けボルトが表現されています。

ハンドホールの部分は別パーツになっています。

架線柱と周辺のお話-交流編・前編-

昨年の1月に直流鉄道の架線回りについて書きましたが、色々と反響と感想を頂きました。その後もメールなどで「交流もお願いします」と、リクエスト頂いて1年経っちゃいました。
そこで、2012年冬季講習として今回は交流区間について書いてみます。
不定期連載で、交流前編、後編、最近の直流設備の傾向、の3回に分け説明する予定です。
最初に、電気動作原理等は模型へのストラクチャー設置と応用を目的としているため、大雑把な理論としてわかりやすく説明しています。よってこの説明、原理ですべての事象が発生しているしているわけでは無い事をお断りしておきます。

まず、交流区間での電気の流れは、直流と同じように下の図のようなイメージを抱いている方が多いと思います。

上の図ではき電線は省略されていますが、直流の代わりに交流が流れているだけだから、おそらくこう思われている方が大半だとおもいます。
き電線については昨年の記事のコチラをご笑覧ください。
交流送電方式はBT方式とAT方式の2方式があり、大雑把に言えばAT方式は新幹線、BT方式は在来線と思ってください。しかし、AT方式が後から開発され技術的にも優れているため在来線でも後期の交流電化や新線交流区間では、AT方式が採用されています。鹿児島本線の八代~西鹿児島間や羽越線、奥羽本線の一部、TX等です。
在来線で代表的に採用されているBT方式の電気の流れは以下のようになります。

変電所回りとBTセクションの一部を略して書いてありますが、BTというのはブースタートランスの略語で、吸上トランスを指します。
変電所から出た電気は、架線を通り列車で消費されレールへ抜けるまでは直流と一緒ですが、BT付近で負き電線に吸い上げられここから変電所へ戻るルートを取っています。BTセクションも厳密には限流抵抗が入ってますが、今回はわかりにくくなるので省略します。
交流は東日本では50Hzと言う周波数の元送られていますが、単位がHzであることから分かるように音にもなり、電波にもなります。カラオケでマイクプラグがちゃんと刺さっていないときに、スピーカーから「ブーン」っと言う低いうなり音が小さく聞こえた経験あると思います。あれが50Hzの音なんです。古いラジオやテレビから同じような音を聞いた経験のある方もいらっしゃると思います。
東日本の交流鉄道事業者で言えば電力会社から50Hzに乗った電力を買い、自社設備で電圧のみを変換していますが、周波数はそのままです。実はレールからは地面へ常に電気が流れ出ていて、地面に交流電気が漏れ出すと様々な通信障害を起こします。その対策としてレールに帰線電流があまり流れないような構造にしてあります。
つまり、50Hzと言う電磁誘導作用を持つ電気が這いつくばり、鉄道施設物だけでなく、近接している住宅のテレビなどへ電波として飛び移りスピーカーから変な音が聞こえてきたりしてしまうと言うわけです。かなり大雑把な説明ですが、何となく分かって頂ければ結構です。
さて、BT方式の設備を見てみましょう。

架線構造は直流と同じシンプルカテナリーを採用しています。前回のコチラをご参照ください。直流ではき電線という物が2本並んでいましたが、交流区間では離隔の兼ね合いなどがあり上下別々に負き電線という物が上に設置されています。その脇には2本線の信号高配線が上下線別に2系統あります。直流区間での信号高配線は3本ありました。
負き電線は上のヘタクソな図にある通り変電所へ戻る帰線となります。
交流区間では電圧が20000Vと特高扱いであるため、事故電流が流れたときの対策として、上下線の架線柱を分けて単線架線柱にしたり、地絡導線という線で支持物碍子と負き電線を接続させています。
交流線区のレイアウトで架線も再現される場合、この地絡導線もポイントとなります。地絡導線は各架線柱毎に設置されていて、碍子と負き電線を結んでます。

模型の製作を考えると、カトーの複線架線柱は前回理に叶っていると書きましたが、単線架線柱を交流に応用する場合、トミックス、カトー共に今ひとつといった感じです。
次に、BTこと吸上トランス付近を見てみます。変圧柱のスパンを短くしたような形状で、真ん中に吸上トランスが設置されています。地形などの制約を受ける場合を除き、上下線別ほぼ同じ場所に約4km毎で設置されます。

この配線をがんばる方のために配線を説明すると、ヘタクソな絵の通りトランスの両端子が架線と負き電線に繋がっているだけです。電柱の両脇にある大きな碍子は避雷器です。
カトーは架線柱や橋りょうは良い出来をしてますが、変圧柱についてはちょっとがっかりな出来でして、このBTを模型で再現するにはGM製変圧柱のスパンを短くし、附属している中で一番大きな変圧器を載せればそれらしくなると思います。

柱は太めのΦ400と思われます。

直流は1500V送電ですが、交流在来線は20000Vと高い電圧で送電しています。中学の理科で電気に仕事をさせる単位W(ワット)を習ったと思いますが、W=電圧✕電流です。つまり出力が同じモーターを回す場合、電圧が高いと電流は少なくてすみます。電流が少なければ、電線は細くてもすみます。そして交流送電は直流に比べて送電損失が少ないため変電所間隔を長くする事ができるメリットがあります。
首都圏の直流区間変電所間隔は5kmを標準とするのに対し、交流区間の変電所は30~40km間隔ですんでしまいます。
欠点も色々あり、負き電線などの離隔を取るため、トンネル断面積が大きくなるとか、BTがトランスであるため列車が近づくと独特の「ブーン」ッという唸り音を発し、住宅街などでは騒音の面でデメリットとなります。車両側の設備費がかかりすぎる、と言うのは皆様分かると思います。
不定期で続く・・・