一通り塗装を終え、マスキングテープで仮組みしてみました。
面積もさることながら高さもけっこうあります。
結構手強いかも。
架線柱と周辺のお話-補講終端処理-
ヤマシタさんより終端処理のリクエストありました。終端部分は軽く流す予定でしたが、今回も模型に使える理論をちょっと添えてまとめて見ました。
架線終端部分は模型も出ているので良いアクセントになります。架線は碍子を介し、直接電柱に引き止めるモノと、張力自動調整装置と呼ばれるモノを介して引き止められる場合にわかれます。
張力自動調整装置・・・テンションバランサーと呼ばれ、電力屋さんと話する時はバランサーで通用します。下の写真はおもり式と呼ばれるタイプです。
こちらはスプリング式です。以前はスプリング構造に弱点があったため駅構内などの短区間使用に限られてましたが、最近はスプリングをダブル構造にしたものが開発され、おもり式にくらべ設備が小さくなるメリットがあり長区間の本線上でも採用されるようになりました。
こちらは渡り線部分などの短区間で使用される直引き式です。構造的には一番簡単ですが、外気温によりトロリー線が延び縮みするので、短区間でしか採用出来ません。
上の3枚の写真を見ると電柱を境に、斜め後にワイヤーが出ているのが見えると思います。前回中編で架線の一般的な構造と名称を書きましたが、吊架線、トロリー線共に約1tずつの張力を保って張られています。従って引き止め柱には電線方向へ2t近い力で引っ張られ続
ける事になります。
これは電柱にとって悲劇です。大きな基礎を打ち込めばこの力にうち勝てますが、基礎構造がデカクなるばかりか、費用的にあまり現実味がありません。それに電柱も太くしなければなりません。そこでベクトル方向にワイヤーを張って、この力を分散させてやります。ワイヤーは支線と呼ばれます。
支線の設計上の理想は45度で引っ張ることですが、これでは長いスパンの用地が必要となるため、実際には30度くらいの角度になります。そして、吊架線、トロリー線と電線が2本あるので、支線も2本張り電柱や支線への負担軽減を図ります。上の図は1線で略してます。
さて次は、車庫や駅の終点部分での電柱の選択について触れてみます。
下の写真の様に一般的に架線終端部分には、上で説明した通り構造上電柱の後に長い支線が張られています。ココでは45度の理想的な支線ですが、車止めの背後にもの凄い無駄な用地を必要とします。
逆に言えば用地があったから良いのですが、直ぐ後が道路だったり管理上必要な用地だったりした場合こうは行きません。
下の2枚の写真は斜めに電柱が寄り添っていますが、これらの電柱はラット柱と呼ばれます。ラット構造の引き止めなどと言います。
張力と支線の構造が分かっていただければ、写真を見て何となく分かると思います。構造的にはビームに架線を引き止め、電柱それぞれに支え棒として役目を果たす電柱を斜めに置き、張力に対し本体電柱が打ち勝つ様支えています。車止めの後がすぐ道路だったりした場合に用いられる方法で、用地ギリギリまで線路有効長を長く取る事ができます。
最近では、鉄柱の裾を若干広げラット柱と同じ様な線路側に突っ張る構造で張力を分散させる構造の引き止め柱も出てきました。この場合基礎が若干大きくなるため、車止めと電柱の間に若干の距離をおきます。
鉄柱の場合は錆を防ぐため塗装を行い、そのため数年おきに塗装工事が発生し、管理費の面ではイマイチでしたが、近年は塗装不要な亜鉛メッキが安価に行え、また鋼材加工も昔に比べ安くなってきたのでこのような鉄柱構造が増えてきました。しかし、コンクリート柱に比べるとまだ高いです。
さて最後に、大きなターミナル駅や駅ビルがある場合は直接建物にアンカーボルトを植えて引き止めてしまう事が出来ます。電柱が無くスッキリしています。
架線の長さは約1キロです。本線上にバランサーがあるのはその切れ目でしてその他には変電所のセクション付近にもバランサーがあります。また4~500m程度の区間であれば、片側だけバランサーを持ってくる構造でも大丈夫です。ただ、これは管理してからの都合になるので、温度変化の激しい場所などでは2~300m区間でも両側にバランサーを設置する事もあります。
今回のまとめとして・・・
車庫の終端部分で丸棒コンクリート柱を1本置き、直ぐ後が道路では変・・・と言うのがお分かりいただければと思います。現在張力はtではなくkN(キロニュートン)の単位が採用されてますが、単位が馴染みにくいので敢えて旧単位で説明しました。
架線柱と周辺のお話-後編-
最後はまとめとなり、レイアウトに設置する参考項目です。
一番最初に架線柱のスパンは決まっていないと書きましたが、これは設計条件により異なるからです。会社によってはある程度決めていることもありますが、地盤や風荷重、構造物によって必ずしもその数値にはなりません。
下の写真は東武鉄道ですが望遠で見ると、まるで京都の伏見稲荷の鳥居のようです。大ざっぱに書くと、直線では30~40mおき、曲線では20~30mおきに架線柱を設置すればほぼ問題ありません。ちなみに東武も信号機、踏切近くに柱上トランス設置されているようです。写真でも左側にうす緑色のトランスが見えます。
昨日鎌ヶ谷の帰り野田線の六実駅まで行きました。この区間はき電線は1本のみで、西武線と同じように架空地線が張られていました。右の電柱には信号機のための柱上トランスがあります。
架線柱は線路条件がよければ50m以上スパンを開ける事もできます。こちらは高架橋上の架線柱ですが、高架橋の柱は近年一般的に9mスパンが用いられてます。高架橋の場合、柱と架線柱の位置を同じにする事で設計条件を有利にする事が出来ます。こちらの区間は5スパン開いているので、約45mおきに架線柱があることになります。この辺の考え方は鉄道会社によっても異なります。
次に信号高配線を構造物条件で見てみます。トンネル付近では信号高配線はまとめられ壁伝いに送電されています。トンネル内に入ると車窓から波打つケーブルが視界に入ってくるのを
ご覧になった方もいらっしゃると思います。
き電線も同じく壁伝いに入りますが、コンパウドカテナリーの場合き電線を省略できる場合もありますが、この辺は難しくなるので今回は割愛します。トラス形状の橋りょうで送電する場合、トラフに入れたり、トラスの上にフレームを建てて送電したり、この辺も会社毎に考えが違うので参考にしたい橋りょうを観察してみて下さい。
会社の事情は信号高配線などもその例で、西武秩父線では5本の信号高配線があります。写真は横瀬駅構内ですが、左側の架線柱の上には5個の碍子が並んでます。
秩父線内の駅設備では電気室の様なモノは見当たらず、柱上トランスが良く見受けられました。
3相交流のほか、単相交流も送られているようでそのため通常の3本+単相交流の2線が加わり5本となります。秩父線内では気象条件の影響かあるいは駅での電気設備を簡素化するための措置と思われますが、この辺の事情は分かりません。
こちらは吾野駅ですが、同じです。建設費の影響か、駅施設の軽減の様に思われますが、両駅とも写真は2009年に撮影したモノなので現状と違っていたらごめんなさい。
車庫内を見てみると車庫内にはき電線のみで、高配線はあまり張られていません。信号高配線はトラフなどで送電されているのが一般的です。
さて、最後に模型化にあたり設置すべき標識のうち「電車線区分標」があります。この標識は送電区分の切れ目に設置するモノで、変電所の付近でも送電系統の切れ目に設置されます。
Aパターンは図の左右に送電されるほか、中央部に独立した中立区間が存在します。一般的にはデッドセクションとなり送電事故が発生した場合この部分の送電を切る事で電気的に独立させる事ができます。ここのセクションに跨って列車が停止した場合、大きな電位差が発生し、架線を溶断する可能性があります。中立区間はその線区を走る列車編成長以上の距離をとる事になってます。Bパターンは平行送り出しのみで、この場合電車線区分標は1カ所のみとなります。
この標識はビームに取り付けられていたり、電柱に取り付けられていたり鉄道会社によって異なります。
また上下一括き電でない場合は渡り線の中間にも設置される他、大きな車庫の入口などにも設置されています。下の写真は相鉄線の相模国分信号場ですが、ここの渡り線部分にも設置されています。但し、コチラも2年前の撮影なので現状と違ったらごめんなさい。
ここまでやる方はいないと思いますが、柱上トランスに配線を施す場合です。配線する場合は3本ある信号高配線のうち、どれでもいいので2本から配線を引き出し、トランスに取り込んでください。
また、吾野駅や横瀬駅の様に柱上トランスで駅配電設備を製作する際1つだけ約束事があります。それはトランスは2個以上と言う事です。動力電源と電灯電源という2種類の電源を必要とするためです。
設計のまとめとして
○架線柱間隔は直線30~40m、曲線は20~30mおき
○上下一括き電か、上下線別き電方式の違いで渡り線に「区分
標」の有無が出る
○信号保安設備への給電を柱上トランスにするかトラフ送電か
っといったまとめになります。
トミックスの架線柱で、柱上トランス給電ではちょっとおかしいかもしれません。この場合はトラフ内に低圧送電されているとした方が自然です。東武鉄道も改良工事区間などでは柱上トランスの数が減ってました。最後は駆け足でしたがいかがでしょうか・・・
最後までお読み頂きありがとうございました。