保安設備を見る-西武多摩川線-

単線モジュールを着手するのに、我が家から単線の観察が身近な西武多摩川線ですが、設備が色々あるので今回は保安設備の旅で見ていきます。
新装となった武蔵境駅は高架上の終端駅で、まずは車止め部分から。西武では一般的に本線終端部分は砂利盛りの車止めですが、ここは高架上という地形を考慮して過走式車止めが採用されています。基本となる規定での設計の考え方としては建物、高架橋、トンネル内など停止位置を誤った際重大な損害を及ぼす箇所に採用されます。

▲架線には架線終端標識も設置されてます

次は信号機で、出発信号機です。進行方向側にあり、ポイントが合流する手前に設置されます。
駅の進出側をみると、3,4番線合流用ポイントの他にJRとの連絡用ポイントが設置されています。信号機は赤の現示が3番線出発用で、黒いカバーを掛けられている方がJR用の出発信号機でまだ使用停止中のようです。
その先にはさらに、安全側線とねずみ取りが設置されていて、一番手前のポイントのみ西武管轄と思われます。

▲合流するポイントの手前に信号機があります

4番線側はおそらく車両の授受時くらいしか使われないと思いますが、高架化に併せて将来対応も視野に入れているのでしょうか。使用停止中の信号機は、横に向けるか、木片で×印掲示または囲う、黒布で覆う、等の措置が決められています。

▲レールもまだサビサビでした


新小金井駅方面へすすみます。次は行き違いの設備についてです。単線の行き違い駅で、過走余裕距離がないと安全側線を設ける事になっていますが、鉄道省令で技術基準を採用し始めると設備が無くなっちゃう可能性もあります。
場内信号機に警戒信号の現示を出せば、安全側線は省略できますが、西武線の場合到達時分が延びるためか警戒信号を嫌う傾向があります。その次に、出発信号機から合流のポイントまで150mの過走余裕距離がある時にも安全側線は省略できます。

▲新小金井駅は150m無さそうなので安全側線が設けられてます


安全側線には原則として乗越分岐器を使う事になってますが、出発信号機とポイントまでの距離が20mない場合は普通分岐器を使ってもいいことになってます。雨天時などで10m位オーバーランした時、乗越分岐器を超えちゃうと大変な事になりますから・・・

▲多磨駅は信号直下にポイントがあり普通分岐器の安全側線です


新小金井駅の武蔵境寄りは信号機からポイントまで60m位あるので乗越分岐器の安全側線となっています。


こちらは吾野駅3番線の安全側線で、信号機からポイントまで30m程あり乗越分岐器が採用されてました。

▲てっ差が特殊形状です


ちなみに上から見ているだけだと気が付く事は無いですが、このてっ差の乗り越す側はこのように高さが付いていて、設計では本線側レールより15ミリ高くする事になってます。

▲まさに乗り越していきます


次は行き違い駅の信号機を見てみます。場内信号機はホームの始まり部分ではなく、ポイントが分かれる手前に設置されます。多磨駅は武蔵境側へ折返し運転が出来る構造で、1番線側にも場内信号機が設けられています。
左上が2番線側の場内信号機で、ホームの先に安全側線があるので写真の様に黄色の注意現示ですが、1番線側は安全側線がないので「黄・黄」の警戒信号の現示が出るようになってます。

▲安全側線の有無で2現示と4現示の差がでます


多磨駅の是政側で左側が2番線で安全側線付き、右側が1番線側で安全側線はありません。コチラも信号機直下にポイントがあるので普通分岐器による安全側線となってます。
1番線側はそのまま是政方面に出発できますが、2番線には出発信号機がなく、上の写真にある「黄・黄」の警戒信号で入ってきた列車は是政方面には行けません。

▲安全側線の裏に民家が近いです(^^;


上の写真で1,2番線の真ん中にさりげなく立っている標識があります。「列車停止標識」といいこんな十字マークの看板ですが立派な保安設備のひとつで、トミックスの線路際のアクセサリセットにも入ってます。
2つ上の写真で1番線側に列車が入ってきた場合の停止位置の限界をしめすもので、コレを超えた場合はATSなどにより直ちに列車を止める仕組みでないと、国交省の認可が下りないくらい大事なものです。実際には信号電流がなくなるのでATSが動作する仕組みのようです。列車の停止位置の限界を示すほか、地形などにより出発信号機がその場所に設置出来ない時にこの標識を立てます。

▲旅客扱いのための列車の停止目標とは意味が違います

と、3駅見てきただけでも規定にガチガチ拘束され、それらが忠実に守られているのが分かります。それぞれ理由があっての設備なので模型でもそれなりに再現してみたいです。